【ドラマ】「silent」で連ドラ初脚本、生方美久氏の紡ぐセリフが自然な理由「心情を優先する感じ」


silent』(サイレント)は、2022年10月6日からフジテレビ系「木曜劇場」枠にて放送中のテレビドラマ。主演は川口春奈。生方美久の脚本によるオリジナル作品。 高校時代、青羽紬と佐倉想は付き合っていた。想の声が紬は好きで、二人にとって電話や、共通の趣味の音楽はかけがえのない愛おしい時間であった。…
24キロバイト (2,720 語) - 2022年11月3日 (木) 14:03


確かに自然ですね。いわゆるアテがきみたいな感じだと違和感ないのでしょうか。

●台本以上になる川口春奈の“受け”芝居
女優川口春奈アイドルグループSnow Manの目黒蓮らが出演するフジテレビ系ドラマsilent』(毎週木曜22:00~)。本気で愛した人と、音のない世界で“出会い直す”、切なくも温かいオリジナルラブストーリーで、Twitterでは放送されるたびに「#silent」が世界トレンド1位にランクインし、見逃し配信ではフジテレビの全番組で歴代最高を記録するなど、今最も話題を集めているドラマだ。

脚本を務めるのは、『第33回フジテレビヤングシナリオ大賞』を受賞した生方美久氏。このコンクールは、坂元裕二氏(第1回)や野島伸司氏(第2回)、野木亜紀子氏(第22回)といったヒットメーカーに、今クールの月9『PICU 小児集中治療室』を担当する倉光泰子氏(第26回)を輩出するなど、脚本家登竜門的存在だが、生方氏は今作が連続ドラマデビューとなる。そんな生方氏に、初めての連ドラに対する思い、作品の作り方について聞いた――。

○■「違和感は、全部いい意味のものでした」

脚本家の中には、自分が書いていたときの想像と、実際に仕上がった映像を比較して、違和感を覚える作家もいるそうだが、生方氏は、初連ドラの第1話の仕上がりをどう見たのだろうか。

違和感は、全部いい意味のものでしたね。キャストの皆さんが、すごく脚本を理解して演技をしてくださっていますし、もちろん自分で書いたものと違うなと思うこともあるんですが、作品全体として見たときに、むしろ正しくしてもらっているなという印象が大きいです」

中でも川口には、「セリフのお芝居はもちろんなんですけど、特に“受け”のお芝居がお上手だなと思いました。私はト書きに『涙を流す』と書くだけですが、状況と心情を理解していつも台本以上のものにしてくださっています」と、役者の技量を実感している。

○■視聴者の考察に「私が一番びっくり」

視聴者の間で大きな話題となっているのが、セリフのつながりなどから読み取れる“伏線”だ。例えば、第1話での「うるさい」。序盤、想(目黒)が声にした「うるさい」を、紬(川口)は笑顔で受け止めるのだが、ラストでは、想が「うるさい」を手話で示し、紬はそれを理解することができずに2人が涙する……という、全く印象の異なる「うるさい」を表現していた。


また、第2話のラストで紬が突然発した「コンポタ(コーンポタージュ)」についてもそうだろう。第3話の冒頭で、なぜ「コンポタ」なのかを回想とともに視聴者にさりげなく伝える構成となっており、そのことで、紬の現在の恋人・湊斗(鈴鹿央士)の知られざる優しさを表現することに成功していた。

このように視聴者は、セリフの端々を “伏線”とし、“考察”しながら楽しんでいる。この現象について、生方氏は「私自身、そんなに伏線を作ろうとは考えてなくて(笑)。単純に登場人物たちの“何が変わって、何が変わっていないのか”を描く要素の1つとしてセリフがそうなっているだけです。まさかこんなに“考察”されるとは思ってもいなくて、私が一番びっくりしています」と驚いた様子だった。

●「え」「うん」をわざわざ書くようにした

生方氏の中で、物語はどのように作られているのか。

「基本的に心情に沿って書いています。先々の展開を考えながら書いていても、物語が進むにつれて結局変わっていきました。どこに向かわせるかで物語を作るというよりは、心情のほうを優先して書いている感じです。さすがに今の段階で最後の構想はもちろんあるんですけど、第1話を書いた段階では、最終回をどういう展開にするかとか、何も決まっていなかったです」

瑞々しいセリフの数々や、独特の言い回しも今作を鮮やかなものにしているが、こちらについても「特にそんなに意識してセリフは考えていないんです(笑)」という。

「何にこだわって書いているとかはなくて、最初にキャラクター設定を作ったので、その子がしゃべるならこういうこと言うだろうなとか、そういう感じで作っていますね」といい、独特なセリフ回しについても、「普通にしゃべっていても、逆説になったりとか、“え”とか“うん”とか普通は言うじゃないですか。そのほうが自然だなと思っているので、意識しているとすれば、セリフの中で、そういった、“え”とか“うん”とかをわざわざ書くようにしていますね」と教えてくれた。

生方氏を起用した村瀬健プロデューサーは、物語が決まったときに「生方さんが登場人物の設定はこんな感じという“プロフィール”を作ってきてくれたんです。それがA4ペラ1枚2枚とかの文量だったんですけど、とても良くできていて、それぞれの登場人物たちにどういう出来事があって、どういう人生を送ってきたのかがすごく分かるようなものでした」と明かす。

さらに、「彼女の才能を信じているので、良い意味で、好き勝手に書いてもらっています(笑)。そして出来上がったものに対して、僕らはそれが一番面白いと思っているし、そのまま受け入れているという感じですね」と絶大な信頼を寄せていた。

その信頼はスタッフだけでなく、出演者からも。「大作家先生ではないので、一字一句変えちゃいけないという感じでは全くないんですけど、セリフのディテールがとてもいいので、役者さんも本を愛してくれていて、強制するわけではないのに“てにをは”まで変えずにしゃべってくださっています」(村瀬P)とのことだ。

○■参考にしたのはキャストたちのインタビュー映像

こうして生方氏が紡いだセリフによって、“演じている”という印象を感じさせず、それぞれのキャラクターに合った“自然な言葉”を発しているように見える点も、共感度を高める要因の1つだろう。その背景に、キャストたちの素のしゃべり方の分析があった。

「元々ドラマや映画が好きで、川口さん、目黒さん、鈴鹿さんの3人の作品もよく見ていたのですが、今回参考にしたのは、演技をしているところというより、インタビュー映像でのしゃべり方とか、声のトーンとか、そういうところを反映しました。無理にキャラクターを当てはめるのではなく、それぞれのイメージに合うものを意識しました」(生方氏)

最後に、生方へ視聴者の反響の大きさについて伺うと、「みなさん、私が書くときより頭使って見てるんだなって思っています(笑)。もちろん、自分の遊び心に気づいてくださる方もいらっしゃいますが、私が意図していなかった部分に反応してくださる方も多くいらっしゃいますね」と、熱心なウォッチャーたちに感心していた。

制作者の思いや意図以上に視聴者が盛り上がるのは“良い作品”である何よりの証拠だ。それは生方氏が丁寧に丁寧に物語を紡いでいるからこそで、これから最終回に向けて、私たちの想像力を大いにかき立てる“豊かな作品”を見せてくれることに期待したい。

テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマ脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら
(「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平)
画像提供:マイナビニュース


(出典 news.nicovideo.jp)


ドラマ『silent』の「ながら見」や「倍速視聴」を許さない脚本の妙
…見るべきクオリティの高い恋愛ドラマに仕上がっている。本作の脚本を書いた生方美久は、連続ドラマ初執筆であるどころか、これがプロデビューだというから恐るべき才能である。
(出典:現代ビジネス)


生方 美久(うぶかた みく、1993年 - )は、日本の脚本家。 群馬県富岡市出身。群馬大学医学部保健学科卒業。県内や都内の医療機関で看護師をしたりシネマテークたかさきでアルバイトをしながら脚本を学ぶ。 最も尊敬している脚本家の坂元裕二が大賞を受賞していたことからフジテレビヤングシナリオ大賞に応募…
7キロバイト (895 語) - 2022年11月2日 (水) 10:51